25)メルセデスA160

Mercedes-Benz

メルセデス・ベンツ

保育社から「世界の名車」第16巻を上梓した時、メルセデス・ベンツに対してつけた惹句は「自動車の王道を行く/世界の最高であり/スタンダード ―― メルセデス・ベンツ」。いまもそうだが、泰然自若とした雰囲気とともに、つねに注目を集めるブランドである。
 初めてこの世に「自動車」というものをたらしたブランドは、その後もずっと世界のお手本というようなポジションを守り通している。安全とか「エコ」とか、自動車に課せられてくる大きな命題に対しても、慌てて急ぎ過ぎることなくメルセデスならではの規範で対応する。口で言うのは簡単だが、それを長きにわたってつづけている確かさのようなものが、メルセデス・ベンツの真骨頂というものだろう。
■メルセデスA160/Mercedes Benz A160
*MERCEDES-BENZ MODERN*

 それは1998年のこと。いまから15年以上も前のことになるのか、と改めて考えるとちょっと時間の経過の早さに驚いたりしてしまうのだが、その日、1台の小型車を箱根で走らせていた。メルセデス・ベンツの新しい小型車、「Aクラス」である。以前、メルセデス初の「5ナンバー」と話題になったメルセデス・ベンツ190Eに乗った時、あの風格と信頼性のなかにあった憧れのメルセデス・ベンツが、あまりにも身近かにやってき過ぎたようで妙な気持ちになったのを思い出したりしながら、ちょっと試すような気持ちで「Aクラス」のステアリングを握った。
 ワインディングをかなり本気で走ったように憶えている。峠のパーキングに停めて観察した時、フロントのディクス・ブレーキからはうっすらと白煙があがるほど、といえばどれほど痛快な走りでであったかが想像付くだろう。とにかく「Aクラス」はそれでもまったく破綻を見せるどころか、安心感とともに汗をかかせてくれたのだ。メルセデスを見る目が、少し変わった日だった。

ヒイキのイケン:

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