Mazda
マツダ
思い返してみれば、マツダは独自の規範で時代に名を残す意欲的なモデルをいくつも残してきた。いうまでもなくその筆頭は、マツダ・コスモ・スポーツにはじまるロータリイ・エンジンを搭載した一連のスポーツ・モデルだ。ファミリア・ロータタリー・クーペ、RX-3サバンナ、RX-7、RX-8とつづく系譜は、わが国の自動車史においても独自のポジションを保っている。このなかにも、前輪駆動のRX-87ルーチェ・ロータリー・クーペなどという隠れた意欲作も含まれる。
そんなマツダだが、昨今はまったくちがう顔を見せている。マツダ・デミオのヒットはご同慶だし、基本に忠実なスポーツカー、ユーノス/マツダ・ロードスターの存在も忘れられない。
そんなマツダだが、昨今はまったくちがう顔を見せている。マツダ・デミオのヒットはご同慶だし、基本に忠実なスポーツカー、ユーノス/マツダ・ロードスターの存在も忘れられない。
■ マツダ・ルーチェ・ロータリー・クーペ/Mazda Luce Rotary Coupe
*MAZDA CLASSIC*
もう忘れられてしまっているかもしれないが、マツダ・ルーチェというサルーンがあった。とくに初代モデルはイタリア、カロッチェリア・ベルトーネ時代のジウジアーロによって描かれたクリーンで美しいボディを持つ4ドア・サルーンだった。彫りが深いフロントに、ルーフは平らでピラーは細く、ガラス面積が大きなスタイリングは、いかにもイタリアンといったエレガントさが漂っていた。
マツダ・ルーチェ・ロータリー・クーペは、名前にこそルーチェと付き、スタイリングに共通のイメージは持つものの、生産に関してはまったく別物の中身を持っていた。そもそもは1967年の東京モーター・ショウに、のちにマツダ・ファミリア・ロータリー・クーペとなるRX85とともにRX87の名前で展示されたプロトタイプ。それはマツダのシンボル、ロータリー・エンジン搭載車であったが、そのエンジンは新規のハウジング・サイズを採用した13A型というもので、しかも前輪駆動となっていたのである。ホイールベース2580mm、全長4.5m超のサイズは、4ドアのルーチェと共通するどころか、それよりもひと回り大きい。
1969年発売されたが、初めて三角窓のないハードトップであったことや価格的に175万円のスーパーDXはいすゞ117クーペに匹敵することなど、上級パーソナル・カーという印象が強く打ち出された。結果的には1972年までわずか1000台足らずを発売したにとどまる、幻のクルマになったのだった。