Maserati
マセラティ
基本的には上級のスポーツカー、サルーン・ブランドだが、歴史的にはレースでの栄光、ときに個性的なスーパーカーなど、マセラティにはつねに羨望のまなざしが向けられていた。1980年代の四角く巨大なマセラティ・クアトロポルテⅢを走らせ、あまりの迫力に感動しつつ、メルセデスではなくてマセラティを選ぶ社長さんに親しみを憶えたりしたものだ。その後も、ガンディーニ・デザインのクアトロポルテ(Ⅳ)では九州まで快適至極のロング・トゥアーをしたり、はたまたマセラティ3200GTでイタリアを走ったり、いつの間にかマセラティにはずいぶんお近づきになっている。
近年は独自の個性と存在感で生産台数を増しているマセラティ。高性能高級サルーン/GTのイタリア代表として、しばらく君臨しつづけるにちがいない。
なんだなんだ、もう一度ボーラが出てきたぜ、などというなかれ。同じマセラティのミドシップ・スーパーカー、ほとんど同じボディを共用しているとはいえ、実際に走らせてみると大いに異なるテイストのマセラティ・メラクである。1965年からマセラティ社はシトロエンの傘下にあった。先に少し説明を加えておくと、その後、シトロエンがプジョーの傘下に入ったこともあり、一時デ・トマソを経て、1993年からフィアットのもとで今日に至る。
で、マセラティ・メラクはシトロエンの色が強く感じられるモデルとして、記憶に残っているのだ。つまり、ボーラの廉価モデルとしてV6エンジン搭載、2+2という、フェラーリにおけるディーノ308GT4、ランボルギーニにおけるウラコに対応するモデルとして企画されたのだった。そのV6エンジンというのがシトロエンSMにも載せられたマセラティ・デザインの3.0L、190PSユニット。エンジンが小さくなった分、最小限ながらリアに+2シートの余裕ができた、というわけだ。
ホイールベースはじめ、ボディの多くをボーラと共有することは前述の通り。あtらしいアイディアとして、エンジン・ルームの排気のことを考えて、ファストバックにはせず垂直のリア・ウィンドウで上部はカットした形にされた。しかし、それでは視覚的にまるでピックアップのよう。そこでどうしたかというと、斜めのバーを付けることによって、アウトラインはボーラと同じようにスタイリッシュにまとめられたのであった。
初期モデルは、シトロエンのメーターパネルやステアリングホイールなどもアクの強いシトロエン製で、運転する雰囲気は大いに特徴的であった。1975年には220PSにパワーアップしたメラクSSに。そのときはシトロエン社と離別していたため、室内などマセラティ化が進められていた。
タヌキネコ says:
V8エンジンのボーラとV6エンジンのメラク。緑色のスフィアが曲者。