Jaguar
ジャガー
ずいぶん前のことだが、ジャガーの工場と工場に併設されている博物館を見学したことがある。クラフツマンシップ、それこそレザーとウッドの使い方など、予想していた通りの上質のつくり方が解った。ジャガーXタイプを1週間にわたって駆り出し、英国取材のアシに使わせてもらったりもした。やはり英国でのジャガーは相応のステイタスがあり、誇りでもあることを感じた。やはりジャガーはなくなってもらっては困るブランドにちがいない。
ジャガー・スポーツカーの原点、もちろん戦前のクラシックはあるのだが、趣味の対象としてみるとやはり戦後のジャガーXK120あたりからが現実的だ。ジャガーが今日までつづく名声を得るもとは、戦後いち早く高性能スポーツカーを生産し、米国市場で大きなヒットを得たことによる。その尖兵の役を果たしたのがジャガーXK120だ。
ほとんどが4気筒、それも旧式なOHVというようななかに、直列6気筒DOHCエンジンを以って登場。最高速度120mph(190km/h+)を謳ったXK120のモデル名とともに大きな注目を集めた。ジャガーXK120のヒットを受けて、1954年にXK140、1957年にXK150と発展して、1960年代のジャガーEタイプに引き継がれるのだが、戦後ジャガー・スポーツの第一世代としてXKシリーズは忘れられない。
当初、軽快なロードスターとしてデビュウしたXK120には、のちにクーペ・ボディのXK120fhc(フィクスト・ヘッド・クーペ)、耐候性などにも配慮したオープン・ボディのXK120dhc(ドロップ・ヘッド・クーペ)が加わった。すべてのモデルを採り上げるわけにいかないのなら、際立った存在としてXK120fhcがいい。たとえばMGAにも似たスタイリングのクーペが存在するが、オープン・ボディにヘルメットをそのまま固定したのではないか、というような後頭部の丸いスタイリングがひとつの時代を象徴するかのよう。
この時代はしっかりとしたシャシーを持っており、思ったよりずっと高い着座姿勢でのドライヴィングも独特だ。エンジンは実用性に富み、低い回転数からさすがDOHCというべき高回転域まで淀みがない。垂直に立った大きなステアリング・ホイールを抱えるようにして走れば、味わい深い古典的スポーツカーが感じられる。
インテリアはウッドが多用されており、雰囲気的にも満たされよう。
タヌキネコ says:
ジャガーXK120も、MGAもfhcが独特の味を醸す。いつまでみてても飽きない後頭部。