59)ホンダNSX/Honda NSX

Honda

ホンダ

ホンダがメーカーとしてとても興味深いものだ、と思ったのはその会社のなりたち、本田宗一郎さんというカリスマの存在だけでなく、「社風」そのものが情熱的であるということを直感していたからだろう。若かりし頃、注目すべきはソニー製品、カメラはオリンパス、クルマだったらホンダが面白い、などといっていたものだが、解る人は解ってもらえよう。ホンダSシリーズ、NやZといった「軽」、そしてシビックという流れは、そのまま自動車を取り巻く環境の変化を思わせる。それにしても、ホンダが大メーカーになるに連れて、クルマ好きのことなど考えてくれなくなった、とホンダ党の友人某は嘆いたものだが、CR-X、ビート、NSXなど時機をみては、かつての片鱗を伺わせる。
■ホンダNSX/Honda NSX
*HONDA CLASSIC*

 クルマにはいろいろな価値があるけれど、ホンダNSXもまた永遠に残しておくべきひとつとして忘れられない。マーケットのニーズに従って合理的に設計、コストを下げて量産し、商品として高い価値を持たせたクルマが多いなか、その真逆をいっているかのような印象を与えるのが、ホンダNSXであった。
 軽量であるためにアルミニウムを多用し、そのための専門工場までつくったという話は後世まで語り草として伝えられるにちがいない。2005年の生産終了後もレストレーションに対応する「リフレッシュ・プラン」なるサーヴィスを行なうなど、生まれながらにエポックメイキングな存在を目指し、それが継続されているのは素晴らしい。
 誕生時にそれを特集したヴィデオ・マガジン制作に関わったことで、じっくり観察し取材した。基本的にはフェラーリ328GTBが下敷きになっているようにみえるが、実際の「モノ」としての完成度は遥かにお手本を凌駕している。まさしく、職人の手づくりによるフェラーリに対し、かっちり機械で基本をつくり、それに職人技を添加したようなホンダNSXは大資本ならではの力を見せつけるかのようであった。どちらがいい、悪いではなく、両方を選ぶことのできる豊かさを感じたものだ。
 美しいなかにちょっとしたデザイナーのワンポイントを注ぎ込んだフェラーリに対し、「単なる美人は撮りにくい」と評したのはクルマに期待するもののちがい、というものだろう。

ヒイキのイケン:

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