100)ジネッタG4

Ginetta

ジネッタ

英国車で魅力的なことのひとつに、われわれクルマ好きが思わず心和まされてしまうようなクルマがひっそりと息づいていることがある。たとえば、ジネッタのようなクルマはその最右翼というものだ。ウォークレット兄弟によって1950年代後半に形づくられたジネッタは、いくつかの名車を生み出している。
 基本的にはスーパー・セヴンのようなスパルタンでレーシイな性能を持ちつつ、無機質ではないちょっとクラシカルで好もしいボディをまとっているのが、ジネッタの特徴といえよう。もちろんサーキットに持ち込んでもいいし、眺めているだけでも嬉しくなるのがジネッタ。いわゆる「バックヤード・ビルダー」なのだが、それは、クルマ好きが自分たちの欲しいクルマを自分の家の裏庭でつくってしまうことに由来する。
 だから、われわれクルマ好きにとって魅力的でないわけがない、ということだ。われわれと同じクルマ好きがつくっているのだから、心和まされてしまうのは当たり前ともいえる。それこそがジネッタなどの真骨頂。楽しみのためのクルマとして考えたら、こんなクルマが存在していてくれるんだ、と嬉しくなってしまうほど。
■ ジネッタG4/Ginetta G4
*GINETTA CLASSIC*

 ジネッタ・ブランドの中で一番のヒット作となったのがジネッタG4。1961年のデビュウ、その後10年に渡って500台をつくり出した、という。スーパー・セヴンのような鋼管フレームを持ち、フロントにエンジンを搭載、リアを駆動するコンヴェンショナルなレイアウト。ボディはFRPで形づくられるが、生産クウォリティは「バックヤード」の域を出ていてる。オープン2座が基本だが、デタッチャブルのハードトップ、さらにはクーペもつくられている。
 そもそもは1960年代のクラシカルなスポーツカーで、一時生産は中止されていたのだが、四半世紀を経て、それをほとんどそのままの形で再生産がはじめられている。つまり、旧き佳き時代のリアル・スポーツカーを求める声が高まり、その声に応えて嬉しいことにウォークレット兄弟がふたたび動きはじめたのである。

 ボディ・スタイルがいろいろ選べることとともに、エンジンも希望によってある程度自由が効くのも「バックヤード」の産物の特徴といえる。もともとがクルマ好きが自分のためにつくり出したところが原点だから、サーキットに持ち込むのか、リアル・スポーツカーとして公道でのみ楽しむのか、用途つまり自分の好みによって自由にできる、というわけだ。その自由度の高さは大きな美点にもなるだろう。
 幾度かステアリングを握らせてもらったが、まあ愉しい。スポーツカーとはこれほど愉しいものであったか、まさしく覚醒させてくれる。絶対的な性能でいったら、それはスーパーカーというようなものとは比較にならないだろうが、愉しさ、クルマを操る悦びという基準で話したら、遥かに大きな満足が得られる。その満足感は、クルマと運転者とが協力して得られる類のものである、ということも趣味の相棒としては美点以外のなにものではあるまい。まあ、「最後の皿」のひとつというものだ。

ヒイキのイケン:

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