101)ジネッタG12

Ginetta

ジネッタ

英国車で魅力的なことのひとつに、われわれクルマ好きが思わず心和まされてしまうようなクルマがひっそりと息づいていることがある。たとえば、ジネッタのようなクルマはその最右翼というものだ。ウォークレット兄弟によって1950年代後半に形づくられたジネッタは、いくつかの名車を生み出している。
 基本的にはスーパー・セヴンのようなスパルタンでレーシイな性能を持ちつつ、無機質ではないちょっとクラシカルで好もしいボディをまとっているのが、ジネッタの特徴といえよう。もちろんサーキットに持ち込んでもいいし、眺めているだけでも嬉しくなるのがジネッタ。いわゆる「バックヤード・ビルダー」なのだが、それは、クルマ好きが自分たちの欲しいクルマを自分の家の裏庭でつくってしまうことに由来する。
 だから、われわれクルマ好きにとって魅力的でないわけがない、ということだ。われわれと同じクルマ好きがつくっているのだから、心和まされてしまうのは当たり前ともいえる。それこそがジネッタなどの真骨頂。楽しみのためのクルマとして考えたら、こんなクルマが存在していてくれるんだ、と嬉しくなってしまうほど。
■ ジネッタG12/Ginetta G12
*GINETTA CLASSIC*

 趣味というものはキリがない。だからこそ面白くもあり、のめり込むに足るという理由であるのだが、ジネッタG4のヒットがジネッタG12に進化したのは、まさしくそんな印象である。ジネッタG4はいうなれば尖った先端にある究極のスポーツカーのひとつといえるが、さらにその先を求めるなら大きくスペックを変更してでもジネッタG12に至るのだろうなあ、ということがクルマ好きならば容易に理解できたりする。
 まずレイアウトはミドシップ。より高度なレーシング性能を求めた結果、キャビン背後、ホイールベース内にエンジンを搭載し、重量バランスを理想に近づける。縦置きするエンジンもいっそう高性能で、たとえば「コスワース・チューン」190PSが580kgのボディに搭載されることを想像してみて欲しい。

 ボディ・スタイルはご覧の通り、ミニ・スーパーカーというようなスパルタンなもの。逆にいうならば、スーパーカーの類は素晴しいけれど、わが国の路上ではいかにも大柄に過ぎて、スポーツカー・フィールを得ることができない。そういう思いはこのジネッタG12がみごとに解消してくれる。もちろん美点とデメリットは裏表。まあ、タイトになったキャビンで、もう走りに徹するしかない、というような思いに駆られることもあるだろう。
 しかし「人馬一体」ならぬ「人車一体」、クルマと運転者とが協力し合って性能を引き出すという愉しみを味わってしまったら、もう元には戻れない。猛々しいエンジン・サウンドとともに快走する悦びは、まさしく別格というものだ。

ヒイキのイケン:

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

一覧へ戻る