Abarth
アバルト
イタリアの「火の玉ブランド」と名付けられたアバルトは、もっとも興奮させられるブランドのひとつといっていい。小さいくせにスタイリッシュ、排気量も小さいくせにカリカリのチューニング。ボディはカロッツェリア・ザガートがアルミで丹念にこしらえ、エンジンは「アバルト・マフラー」でとどめを刺す、なにはともあれ好き者が好き者のためにつくったようなブランドなのだ。とても繊細で「飼い馴らしにくいサソリ」といわれたアバルト、本当にそんなに大変なのか、と実際に飼っていたりもした。その購入、メインテナンス、維持、いろいろ勉強になったなあ。懲りずに、いまも欲しいクルマの最右翼。
■ フィアット・アバルト595SS/Fiat-Abarth 595 esse-esse
*FIAT CLASSIC*
フィアット・アバルト595SSは、キュートなフィアット500とアバルトというふたつの魅力を併せ持つ「一粒で二度おいしい」小さなアイドルである。
いまでこそ、ニュウのフィアット500が登場し、そのアバルト仕様、さらにはフェラーリが手を貸したモデルまでが加わるに至って、いささか影が薄くなったと思われるかもしれないが、趣味度という尺度ではまだまだ輝きは失せていない。
フィアット500を思い切りドレスアップしたかのような出で立ち。これでもか、とエンブレムを付けまくっているけれど、それがまたいいセンスで、見ただけでもすぐにステアリングを握って走り出したくさせられる。いいドレスアップのお手本のようなものだ。
それまでもフィアット量産車をベースに、速い小型車をアレインジしてきたアバルトは、1957年にフィアット500が発売されるやそれをベースに、数々のアバルト・ヴァージョンをつくった。それはフィアット・アバルト500ベルリーナにはじまり、594cc、27PSエンジン搭載のアバルト595、32PSの595SS(esse-esse)から38PSの695SSアセット・コルサに至るまで。これとは別に1957年にはザガート・ボディのアバルト500ザガートも提案され、小さなフィアット500をベースに並々ならぬ意欲を示した。
アバルトの名の付くクルマはどれもがクルマ好きを熱くさせる。小さなアバルト595SSであっても、もとのフィアット500からは想像できないほどの迫力を以って、ちょっとしたレーサー気分にさせてくれる。ガレージに1台忍ばせておきたいペットのようなクルマだ。