96)フェラーリ・テスタロッサ

Ferrari

フェラーリ

クルマ世界のひとつの頂点のブランド。頂点だけにいろいろプラスもマイナスもあるのは当然として、純粋に憧れさせられる存在であるのはまちがいない。われわれが子供の頃にはあまりにも遠い存在で、馴染みもなにもなかったのだが、だんだん広く知られるようになっていまや高価で高性能なクルマの代名詞のようになっている。その過程をつぶさに体験できたのは幸いであった。どこまでも高嶺の花、永遠の憧れであるのはちがいない。逆にいうと、フェラーリのような憧れのクルマがなかったら、貯金する目標を失ってしまうヒトも出てくる、というものだ。
 「フェラーリでありながらフェラーリでないアイロニイ」などと気取ってディーノ246GTを手にして、写真集をつくり、いくつものフェラーリ関連の書物を世に送り出してきたのは、やはり純粋に憧れ、好きである証拠だろう。
■ フェラーリ・テスタロッサ/Ferrari testarossa
*FERRARI CLASSIC*

 ひとつの時代をつくった、という意味でフェラーリ・テスタロッサは永遠に忘れることのできない1台といえる。時は1984年。まったく新しい形で見るものを驚かせてくれたテスタロッサだったが、メカニズムなどいろいろなことが解るにつれ、なるほどと納得でき、それをこの形にしたデザイン力にもう一度感心してしまう。オトコの趣味には、理屈の裏付けが大切、といういい例でもある。
 視覚的なチャーミング・ポイントはなにがといって、サイドにあけられた巨大なエア・インテーク。これはそもそも前作「BB」の反映だ、という。スーパーカーの雄、「BB(ベルリネッタ・ボクサー)」ことフェラーリ365GT4BBのシリーズは、とにかく走るためだけ、それも並外れてスーパーな走りを提供するためだけのクルマだった。速く走るためにいくつものことが犠牲にされ、それはそれで「オトコの美学」というような捉えられ方をしていた。それを否定するものではないが、一方で誰でも乗れて少しは実用的で安楽なことも要求されたのだ。具体的にはラゲッジ・スペース確保とキャビンの熱さ改善のため、2650mmに拡大されたホイールベースとともにラジエータがリア・ホイール前に移された。サイドのエアインテークは、これを逆手にとって凝らされたアイディアだったのだ。おかげでリアのトレッドが150mm近く大きくなったことも、堂々たるテスタロッサのスタイリングに貢献している。

 「テスタロッサ(赤い頭)」を実践した赤塗りヘッドの180°V12気筒エンジンをミドシップ搭載した性能も充分実用的で速く、ひと口でいえば完成度を高めた。かくしてフェラーリ・テスタロッサは、「ミニ・テスタロッサ」というべきフェラーリ348tシリーズをも生み出し、ひとつの時代をつくった。
 イノウエが個人的に興味深く思ったのは、Aピラーからにょっきりと生えたミラー。残念ながら初期モデルだけで終わってしまったのだが、フェラーリ・テスタロッサの妖艶さを象徴していたようで忘れられない。それを含め、「バブル」の前触れ、という印象も歴史を振り返ると納得できたりするのである。

One thought on “96)フェラーリ・テスタロッサ

  • タヌキネコ says:

    ひとつの時代の象徴。全幅2mないとスーパーカーではない、という法則はこのテスタから…?

ヒイキのイケン:

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