52)シトロエンHトラック

Citroen

シトロエン

フランス車というといまでこそ、プジョーもルノーもシトロエンもしっかり認識されているし、逆にいうとほとんどその3ブランドに集約されてしまっている。そして結構広く浸透しているのだが、ひと昔前までは、フランス車はよほどの好事家のもの、という感があった。それは劣悪なわが国の環境(高温多湿、渋滞の多い道路など)のなかでは、当時のフランス車は住みにくかったし、だからか、なかなかフランス車をきっちり面倒みてくれるところも少なかった。いや、そうした環境にもかかわらず、フランス車は魅力的ではあった。かつてシトロエンCX、CX、DSと3台を経験し、どうしてフランス人はあんなに普段の生活に使いこなしているのだろう、とちょっとばかり嫉妬したイノウエ。もう一度シトロエンDSとの暮らしを、などと思わせるのだから、困ったものである。
■シトロエンHトラック/Citroen H
*CITROEN CLASSIC*

 一時期シトロエンHトラック(日本以外ではHヴァン)を2台も所有していたなどというと、信じてもらえないかもしれないが、工具会社の販売促進、出張販売の手伝いをしていて、全国の工房のようなところを巡回するのに、シトロエンHトラックをそれ風に仕立てて用意したのだった。まだ「宅急便」のトラックなど出現する前、荷室を立って歩ける普通免許で運転できるトラックはシトロエンHトラックしかなかったのだ。しかし、シトロエンHトラック、あの図体にしてエンジンはディーゼルの1.6L。3段ギアボックスで、アクセル・ペダルを床まで踏み込んでもせいぜい100km/h。エアコンなどあろうはずもなく、汗をかきかき夏の東名高速を苦行難行で走ったりしたものだ。
 しかしあのキャラクターは素晴らしい。立ち寄った工房では、いつもの商用車では愛想のなかったスタッフがこぞって見に来てくれる。こんなクルマで来てくれたんだったら、少しは売り上げに協力しよう、などと業績アップにずいぶん貢献してくれた。しかし、エンジン・ブロウするは、走行距離はとんでもなく伸びてしまうは、さらにはディーラーだったS自動車も部品その他で音をあげるしまつで、結局、シトロエンHトラックとのドラマティックな日々は終わったのだった。
 写真の「Power House」はパワーリフティングの有名ジムで、バーベルなど大量の荷物を載せて試合会場などに出張。ここでも宣伝効果が大きかった由。

ヒイキのイケン:

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