73)シトロエンDSファミリアーレ

Citroen

シトロエン

フランス車というといまでこそ、プジョーもルノーもシトロエンもしっかり認識されているし、逆にいうとほとんどその3ブランドに集約されてしまっている。そして結構広く浸透しているのだが、ひと昔前までは、フランス車はよほどの好事家のもの、という感があった。それは劣悪なわが国の環境(高温多湿、渋滞の多い道路など)のなかでは、当時のフランス車は住みにくかったし、だからか、なかなかフランス車をきっちり面倒みてくれるところも少なかった。いや、そうした環境にもかかわらず、フランス車は魅力的ではあった。かつてシトロエンCX、CX、DSと3台を経験し、どうしてフランス人はあんなに普段の生活に使いこなしているのだろう、とちょっとばかり嫉妬したイノウエ。もう一度シトロエンDSとの暮らしを、などと思わせるのだから、困ったものである。
■シトロエンDSファミリアーレ/Citroen DS familiare
*CITROEN CLASSIC*

 シトロエンDSの偉大さというか、その存在のなんたるかは今さら述べるまでもあるまいが、なんとか一度あのシトロエンDSによる生活を経験してみたい。それは、クルマに興味を持ちはじめたときからのぼんやりとした夢のようになっていた。だから、なん台目かのアシとしてシトロエンCXを手にしてからも、いつかはシトロエンDSという気持ちは収まるどころか、なお昂揚していたといっていい。充分にシトロエンCXも別世界だったのだが、それから想像するにさらなる濃密な生活が想像されて、「劇薬」を欲するようになってしまったのだ。
 夢は意外な形で実現した。名古屋でシトロエンDSの生活を実現していたTさんが、仕事の都合で東京に単身赴任になった。ついてはシトロエンDSを預ってくれないか、というのだ。そのかわりウイークデイズは自由に使っていい、という願ってもない提案。かくして、いくつかの約束ごとをつくって、丸3年間シトロエンDSとの濃密で天国のような生活を経験させてもらった。あの乗り心地、存在感。同じ道を走っても景色がちがって見える、というものだ。
 で、シトロエンDSに乗っていたおかげで、いろいろ得る知識も増えた。フランス、シトロエン社にいく機会もあった。パリやフランスのいくつかの街でシトロエンDSのありのままの姿にも出遇ったり、かの地の愛好家とも交流したりした。その結果、どうしても暮らしてみたいシトロエンDSはファミリアーレという結論に達した。見果てぬ夢、ではあるけれど、まだあきらめきってはいない。

ヒイキのイケン:

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