12)アウディR8

Audi

アウディ

いまから20年ほど前になるだろうか。ドイツにクルマ好きや専門ショップなどを取材しにいった。その当時の日本市場では、メルセデスとBMWとが人気でしのぎを削って、その少しあとをアウディが追いかけている、というような構図であった。4WDと前輪駆動に特化したブランド、というイメージも強かった。それが、ドイツ本国ではVWは別として、メルセデス・ベンツ、BMWとアウディは人気が完全に拮抗する三つ巴の存在だと訊いて、認識を改めさせられた。クルマ好きが挙ってアウディ、それも「アヴァント」のディーゼル・ターボを個性的にドレスアップして楽しむ、というのが流行のようになっていたのを思い出す。
 趣味としてのアウディ、アウディTTやアウディR8という解りやすい憧れモデルをはじめとして、いまを楽しむ進化をつづけるブランドのようだ。
■アウディR8/AUDI R8
*AUDI NEW*

 「スーパーカー」というとどこか現実味のない、一部のヒトにとっては絵空事のように思われている節がある。そうはいっても、スーパーな性能は有無をいわせず人々を魅了するものであり、またその性能を具現化したようなスタイリングは大きな憧れを抱かせる。生真面目なヒト向けのスーパーカー。アウディR8を眺めながら、そんな印象を持った。
 エンジンやシャシーは傘下にあるランボルギーニ・ガヤルドと共用する、といってもブランドはアウディ。のちのモデルには「Sトロニック」と呼ばれる「DCT」も導入され、先進メカニズムで武装した完成形に近いスーパーカーとして、その存在感を大いに高めている。
 2650mmのホイールベース、全長も4.4mと決して小さくはないのだが、多くのスーパーカーにありがちな「大きく見せる」ところがなく、むしろコンパクトにさえ感じさせるのは、そのスタイリングのおかげだろうか。機能優先のドイツ車にあって、エンジンの覗けるリアの処理やサイドのアクセントの入れようなど、インパクトの大きさは備えつつもイタリアンとは異なる感覚が独特だ。

■IMPRESSIONS ドイツ流スーパーカー:Audi R8 5.2FSI quattro
 アウディR8 5.2FSI quattroを走らせた。8000r.p.m.で525PSを発揮するという、高回転、高出力の直噴(FSI)V10エンジンを搭載したミドシップ。まあ、どこまでもしゅんしゅん回るエンジンは、気がつけば飛んでもない高速へと運んでくれる。アウディお得意の4WDメカニズムを持つスーパーカーは、まったく破綻の気配すら見せない走り振りを提供してくれた。実際にメーターが示している速度の半分、というくらいにしか感じないのは、剛性をはじめとするしっかりとしたメカニズムの充実振りの現われ、というものか。スーパーカーというと、それに相応しいドライヴァの技量を必要としたものだが、このアウディR8は誰にでもスーパーな性能を提供してくれる魔法の絨毯のようだ。
 確かな手応えとともに、どこか現実味のない不思議な感覚とともに、少しばかり名残惜しいアウディR8のコクピットをあとにしたのだった。

One thought on “12)アウディR8

ヒイキのイケン:

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