Audi
アウディ
趣味としてのアウディ、アウディTTやアウディR8という解りやすい憧れモデルをはじめとして、いまを楽しむ進化をつづけるブランドのようだ。
いまでこそ、ほとんどのモデルにフルタイム4WDが用意されて、珍しくもなんともなくなってしまったが、それまでラフロード走行専用と思われていた4WDを高性能モデルに持ち込んだ功労者として、アウディの存在は忘れられない。すなわち、悪路や雪道走破用に、路面に合わせて2WDと4WDを切り替えてつかう、いわゆるジープ・タイプのパートタイム4WDが主流だったところに、高性能パワーを確実に余すことなく路面に伝えるという目的で4WDのスポーツ・モデルをつくり出したのだ。
グループBモデル「スポーツ・クワトロ」の名で1985年からラリイで活躍したことでも知られるが、それより前から市販モデルとして、アウディ・クワトロが登場していた。デビュウは1980年だ。
フルタイム4WDというだけでなく、当時のアウディはいくつもの特徴的メカニズムの持ち主であった。まず、早くから前輪駆動(FWD)を採用していたが、ミニ以来多くの前輪駆動車がエンジン横置きだったのに対し、アウディは縦置きを固守した。アウディ・クワトロもその例に洩れず、しかも直列5気筒という変わり種。最終的にはDOHC20ヴァルヴが導入されるが、初期モデルはSOHC2.1L、インタークーラー+ターボ・チャージャで200PS(日本仕様は160PSだった)というもの。5段ギアボックス直後に機械式のセンター・デフを備え、四輪にパワーが伝えられる。
ボディ周りは当時のアウディ・クーペで、ブリスター・フェンダなどがその素性を暗示する。シャシーはアウディ80用、サスペンションは前後ともアウディ200用のフロントにつかわれるストラット式。アウディの持てるものを総動員したような印象があり、ひとつの時代を象徴しその後のジャンピング・ボードとなったようなアウディ・クワトロなのであった。