85)アウディ・クワトロ

Audi

アウディ

いまから20年ほど前になるだろうか。ドイツにクルマ好きや専門ショップなどを取材しにいった。その当時の日本市場では、メルセデスとBMWとが人気でしのぎを削って、その少しあとをアウディが追いかけている、というような構図であった。4WDと前輪駆動に特化したブランド、というイメージも強かった。それが、ドイツ本国ではVWは別として、メルセデス・ベンツ、BMWとアウディは人気が完全に拮抗する三つ巴の存在だと訊いて、認識を改めさせられた。クルマ好きが挙ってアウディ、それも「アヴァント」のディーゼル・ターボを個性的にドレスアップして楽しむ、というのが流行のようになっていたのを思い出す。
 趣味としてのアウディ、アウディTTやアウディR8という解りやすい憧れモデルをはじめとして、いまを楽しむ進化をつづけるブランドのようだ。
■ アウディ・クワトロ/Audi Quattro
*AUDI  CLASSIC*

 いまでこそ、ほとんどのモデルにフルタイム4WDが用意されて、珍しくもなんともなくなってしまったが、それまでラフロード走行専用と思われていた4WDを高性能モデルに持ち込んだ功労者として、アウディの存在は忘れられない。すなわち、悪路や雪道走破用に、路面に合わせて2WDと4WDを切り替えてつかう、いわゆるジープ・タイプのパートタイム4WDが主流だったところに、高性能パワーを確実に余すことなく路面に伝えるという目的で4WDのスポーツ・モデルをつくり出したのだ。
グループBモデル「スポーツ・クワトロ」の名で1985年からラリイで活躍したことでも知られるが、それより前から市販モデルとして、アウディ・クワトロが登場していた。デビュウは1980年だ。

 フルタイム4WDというだけでなく、当時のアウディはいくつもの特徴的メカニズムの持ち主であった。まず、早くから前輪駆動(FWD)を採用していたが、ミニ以来多くの前輪駆動車がエンジン横置きだったのに対し、アウディは縦置きを固守した。アウディ・クワトロもその例に洩れず、しかも直列5気筒という変わり種。最終的にはDOHC20ヴァルヴが導入されるが、初期モデルはSOHC2.1L、インタークーラー+ターボ・チャージャで200PS(日本仕様は160PSだった)というもの。5段ギアボックス直後に機械式のセンター・デフを備え、四輪にパワーが伝えられる。
ボディ周りは当時のアウディ・クーペで、ブリスター・フェンダなどがその素性を暗示する。シャシーはアウディ80用、サスペンションは前後ともアウディ200用のフロントにつかわれるストラット式。アウディの持てるものを総動員したような印象があり、ひとつの時代を象徴しその後のジャンピング・ボードとなったようなアウディ・クワトロなのであった。

ヒイキのイケン:

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