84)アルピーヌV6ターボ

Alpine

アルピーヌ

フランスのリアル・スポーツカー、アルピーヌ。その代表たるA110ベルリネットの艶やかなスタイリングは、有無をいわせぬ魅力を湛えている。嬉しいことに、アルピーヌの生みの親であるジャン・レデレさんにインタヴュウさせていただいたり、工場見学をさせていただいたりして、「クルマ好き」のつくったブランドに注がれた情熱の大きさ、また最終的には大企業に呑み込まれてしまう悔しさなど知ることができた。レース会場でカロッツェリア・ミケロッティのボス、ジョヴァンニ・ミケロッティと出逢った話など、当時のクルマ世界についても興味深い話を訊かせてもらえた。
 1960年代を頂点に、まさしく佳き時代のクルマの真ん中に存在する。後年はルノーの一ブランドとなるが、たとえばルノー・スポール・スピダーなど、アルピーヌあっての産物だった。
■ アルピーヌV6ターボ/Alpine V6 turbo
*ALPINE  CLASSIC*

 アルピーヌというと趣味的には「A110」シリーズにのみ集中してしまったかのような印象がある。それは1970年代に入ってルノーがアルピーヌを傘下に収めるとともに、1モデル名としてアルピーヌの名を使用するようになって、あの、スポーツ性能をなによりも優先してきた本来のアルピーヌの精神が失われたことと無縁ではあるまい。それはしっかり念頭においておくとしても、のちに登場してくるアルピーヌはそれはそれで魅力的な存在である。
 アルピーヌA110シリーズの後継とされるA310シリーズが登場したのは1971年のこと。それは前衛的スタイリングで、あまりにもの変貌振りにかつてのアルピーヌ好きが一気に醒めてしまったのだった。その後、1976年にV6エンジンを搭載されたA310V6が登場。スタイリングにも手が入れられたアルピーヌV6GTが1985年に発表されるに至って、ようやく新たな別のモデルという思い切りができたような経緯がある。

 いつだったか、途中の変化を辿ることなしに、いきなりアルピーヌV6ターボを取材する機会を得た。数日間与えられ、写真を撮ったりもちろん試乗して結構な時間を過ごした。それと前後して、街中でアルピーヌV6GTやV6ターボを見掛けることも増えた。なかなか洒落たスタイリングで個性的なライフスタイルが感じ取れるようなオーナーにも出遇って、かつてのA110シリーズとはちがう魅力の持ち主、と強く実感したのだった。アルピーヌV6はひと口でいえばエキゾティックなスタイリングのよくできた高性能GT。ボディの軽さに、かつての血統が少し感じられたりするのもいい感じ、であった。
 1991年にマイナーチェンジしてアルピーヌA610を名乗る。それから類推するに、A310V6がA410に、アルピーヌV6がA510に相当するわけで、1990年代中盤にA610がフェードアウトしたことで、アルピーヌの名は消滅したのだった。

ヒイキのイケン:

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

一覧へ戻る