72)アルファ・ロメオSZ

Alfa-romeo

アルファ・ロメオ

イタリア車が面白い、そのきっかけはアルファ・ロメオだったろうか。1960年代までのクルマ趣味において、アルファ・ロメオはイタリアンの主流であった。五感にダイレクトなスタイリング、サウンド、走り振りなど、誰が見ても格好よかったし馴染めた。周囲にアルフィスタが多く居たこともあって、身近かではあったが所有するまでにはいたらなかった。
 それにしても、アルファ・ロメオは多彩だ。クーペ・ボディは時代時代でどれもがスタイリッシュだったし、それにスペシャル・ボディというべきカロッツェリアメイドの「スペチアーレ」モデルが加わる。スパイダーも同様。持てることならミニカーのごとくに時代ごとにそろえたくなる。それだけでなく「ベルリーナ」、サルーン・ボディがこれまたなかなかの個性派揃い。
 ジゥリア・スプリントをはじめとして、いまでも街ですれ違うと「いいなあ」と思わせるアルファ・ロメオは少なくないし、アルファ156をはじめとする一連のモダンカーもひと味ちがうクルマ生活を与えてくれる。
■ アルファ・ロメオSZ/Alfa-Romeo SZ
*ALFA-ROMEO MODERN*

 アルファ・ロメオ ジウリエッタSZから30年を経て「SZ」の名が蘇った。ふたたびちょっとした低迷に陥っていたアルファ・ロメオが、久々にヒットしかかっていた小型車、アルファ75のフロアを利用し、カロッツェリア・ザガートが腕を振るった。ジウリエッタ時代とちがうのは、アルミではなくてFRPを使って軽量を実現したことだ。しかし、スタイリングは好嫌二分するようなものであった。
 最初に姿を現した1989年のパリ・サロン。忘れもしない、となりに徳大寺有恒さんがいらして、ヴェイルを脱いだとたんに「アグリイだなあ」と呟かれた。3対の四角いヘッドランプを並べたフロント、まとまりを欠いた四角いリア、確かに、かつてのジウリエッタSZのような愛すべき形は感じられなかった。
 その翌年だったか、イタリアでアルファSZの試乗の機会を得た。スタイリングのことが引っかかっていて、さほどの期待を抱くことなく走り出したのだが、いや、走ってみるとそのポテンシャルの高さに目を瞠った。特別傑出したところがない代わりに、高い次元でそつなくいい走りを示すといった風。半日を痛快に走っているうちに、すっかりアルファSZがお気に入りになっていた。そうして見るうちにスタイリングも個性的で悪くない、と思えてくるから不思議だ。もちろんクラシックなジウリエッタSZと直接較べるものではないけれど、いや、アルファSZもいいなあ。

ヒイキのイケン:

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