Alfa-romeo
アルファ・ロメオ
それにしても、アルファ・ロメオは多彩だ。クーペ・ボディは時代時代でどれもがスタイリッシュだったし、それにスペシャル・ボディというべきカロッツェリアメイドの「スペチアーレ」モデルが加わる。スパイダーも同様。持てることならミニカーのごとくに時代ごとにそろえたくなる。それだけでなく「ベルリーナ」、サルーン・ボディがこれまたなかなかの個性派揃い。
ジゥリア・スプリントをはじめとして、いまでも街ですれ違うと「いいなあ」と思わせるアルファ・ロメオは少なくないし、アルファ156をはじめとする一連のモダンカーもひと味ちがうクルマ生活を与えてくれる。
それこそ役者揃いかつ粒揃いで、ひとつを選べといわれると大いなる悩みを抱えてしまうアルファ・ロメオ。ジゥリア・スプリントGTのシリーズはもう「定番」として人気が確立されているし、4ドアのジゥリア・スーパーも捨て置けない。もちろん、時代が流れてアルファスドやアルフェッタGT、さらにはアルファ164(とくにQ4)、アルファ156もやがて残るクルマになるだろう。
そうしたもろもろを思い巡らした果てにジゥリエッタ・スパイダーをあげておこう。なんといってもあの「可憐」と形容されるスタイリング、それにコンパクトで手に余らないサイズ。趣味のクルマ、として主張するならなかなかいい条件が備わっている。いうまでもなく1950年代後半に登場して、アルファ・ロメオの体質改善におおいに貢献したシリーズとしてジゥリエッタ・シリーズは存在し、1960年代にひと回り大きな1.6L~のジゥリア・シリーズに移行する。だけれど、基本的に1.3Lのジゥリエッタ・シリーズでも不足はなく、すでにメカニズム的には完成の域に達していた(とくに1959年~の101系以降)から、維持していくのに特別困ることはない。
逆に美点をあげたら、まあ留まるところを知らない。ピニンファリーナ・スタイリングのボディは、まずその第一にあげられるべきものだろう。アルファ・ロメオの楯グリルを中心にしたフロントから、ちいさな主張をするテイルフィンに至るまで密度の濃いディテールが詰まっている印象だ。それには、もともとのジゥリエッタのフロアパンを130mmちぢめて2250mmとしたホイールベースの効果が大きい。それは、走って小気味よいことにもつながっているはずだ。
イノウエが好きなのはインパネ。基本、ボディと同じ色の鉄板なのだが、上部をパッドで覆いクラシカルなヴェリア製メーターを並べたパネルは、ホーン・リング付のステアリング・ホイールとも相俟って、独特の「いい雰囲気」を醸している。1963年~はエンジンを1.6Lにした同じボディのジゥリア・スパイダーに発展するが、エンジン・フード上のパワー・バルジがないこと一点を採っても、ジゥリエッタがいいなあ。