58) ホンダS600

Honda

ホンダ

ホンダがメーカーとしてとても興味深いものだ、と思ったのはその会社のなりたち、本田宗一郎さんというカリスマの存在だけでなく、「社風」そのものが情熱的であるということを直感していたからだろう。若かりし頃、注目すべきはソニー製品、カメラはオリンパス、クルマだったらホンダが面白い、などといっていたものだが、解る人は解ってもらえよう。ホンダSシリーズ、NやZといった「軽」、そしてシビックという流れは、そのまま自動車を取り巻く環境の変化を思わせる。それにしても、ホンダが大メーカーになるに連れて、クルマ好きのことなど考えてくれなくなった、とホンダ党の友人某は嘆いたものだが、CR-X、ビート、NSXなど時機をみては、かつての片鱗を伺わせる。
■ホンダS600~/Honda S600~
*HONDA CLASSIC*

 熱心なホンダSオーナーの友人が「HTCCクラブ結成35周年」というのに、おめでとうを言ったのが2010年だから、もうすぐ40周年。ホンダS500にはじまり、S600、S800とつづくホンダASシリーズは、それこそ一生ものになるほどに長きにわたって愛好されている。HSCCこと「ホンダ・ツウィンカム・クラブ」だけでなく、英国をはじめ海外にもいくつかのクラブが存在するほど。イノウエも英国のサーキットで遭遇したり、英国ウェールズの片田舎、蒸気機関車撮影に行った先で、偶然にレストレーション作業に勤しんでいるクルマ好きのガレージにホンダS800を発見したりして驚いた。英語版の「e-books : Honda S500、S600、S800 by Koichi INOUYE」(インターブックス)として、翻訳出版されているのも、なるほどというところ。
 なにはともあれ、1Lにも満たない小さなエンジンにDOHCメカニズムをはじめとして持てる技術をすべて注ぎ込んだような姿勢は、一生ものとして所有するに値うる魅力の原点。のちのちのホンダNSXに通じる「ホンダイズム」の発露というものだ。一時期所有していたり、1台をレストレーションする過程をつぶさに追いかけてみたり、いろいろ楽しませてもらった。ホンダらしいアイディアも凝らされていて、今なお側に置いておきたくなるような、まさしく趣味対象だ。
 そうだ、ホンダS600クーペの得もいわれぬスタイリングは、BMW Zクーペ、ジャガーXK120fhcなどと並んで、「傑作」としてじわじわ味が出てくるひとつとして注目、ということを付け加えておこう。

ヒイキのイケン:

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