99)フォード・マスタング

Ford

フォード・マスタング

クルマの魅力は単に性能だとかスタイリングだけではない。フォード・マスタングなどはアメリカの文化そのもの、といった存在感を以って、ひとつの世界をつくり出している。つい先ごろ「50周年モデル」を送り出したことで解る通り、1964年にデビュウ。量産モデルのコンポーネンツを利用しつつ、スポーティさと個性とを盛り込んで雰囲気を楽しめるモデルに仕上げる。その手法から「フルチョイス・システム」と謳った販売法に至るまで、わが国産車に与えた影響も少なくない。それまで欧州の方を向いて進化してきた国産車メーカーが、一斉に米国市場にシフトを変えた。それはマスタングの成功が大きな影響を与えている。歴史を振り返ってそんな気がし、同時にフォード・マスタングのつくり出した「文化」に注目したくなったりする。
■ フォード・マスタング/Ford Mustang
*FORD CLASSIC*

 「旧き佳きアメリカン」というと、テイルフィンをそびえ立たせた1950年代の思い起こすのかもしれないが、そうした特別な時代はさておき、永遠に残しておきたいモデルのひとつとして、フォード・マスタングがある。
 1964年、マスタングは、フォードにとって初めての小型車といっていいファルコンをベースに、「スペシャルティ・カー」という新しいジャンルの主張とともに登場してきた。そう、わが国のトヨタ・セリカなどが大いに参考にした「お手本」にもなったものだ。「フルチョイス・システム」を用意し、エンジンや内装など好みに合わせて選べるようにしたのも、マスタングの手法。マスタングにはハードトップとともに軽快なコンヴァーティブル、のちにファストバックのクーペが追加された。いうまでもない、セリカLBを思い起こさせるクーペだ。

 初期の1966年式のフォード・マスタング・コンヴァーティブル289。289とは米国流、289cu.in.(立方インチ、約4.7L)のV8OHVユニット搭載であることを示している。3段のオートマティック・ギアボックスのセレクト・レヴァをはじめ、きらびやかなインテリア、ホワイト・リボンのタイヤにスポーク・ホイールなどアメリカン・テイストにすべてが包まれている。
 小型車とはいったものの、それは米国の標準というもので、2743mmホイールベース、ちゃんと後にもシートを備えたマスタングは格別の存在感。とてもボニイの感じではない。エンジンをスタートさせれば、ドゥロロロ、とアメリカンV8サウンドを轟かせて走る。まさしく佳き時代のアメリカンを象徴するようなマスタングであった。

ヒイキのイケン:

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