117)MGミジェット1500

M.G.

MG

MGという名前は、ヴェテランのクルマ好きにとっては憧れのブランドとして、強く印象に残っている。1924年にセシル・キムバーというひとりのクルマ好きによって設立され、MGとはモーリス・ガラージの頭文字だから正しくはM.G.と書くんだ、などという話は先輩から繰り返し聞かされたものだ。MGA、MGB、MGミジェットといった身近かなオープン・スポーツカーは、クルマ趣味入門の格好のアイテムとして、広くその名が知られた。
 なにはともあれスポーツカーの典型というようなものだから、そのテイストはいまでも変わらぬひとつの「お手本」として大いに尊重されるべきものといえる。MGAの前には「Tシリーズ」と呼ばれる古典的味わいの一連のスポーツカー、のちには「MG」のネームヴァリウを活かして、MGFやMG RV8といったスポーツカーを送り出したりしている。  MGは、戦前のうちにモーリス社に吸収されその一ブランドとなり、さらに1952年~BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレイション)社、1967年~BL(ブリティッシュ・レイランド)社、その後もオースティン・ローヴァ社、ローヴァ社と合併、変更を繰り返し、BMW傘下になったのち、MGはブランドだけがひとり歩きしている。
■ MGミジェット1500/MG Midget 1500
*MG CLASSIC*

 MGミジェットこそ佳き時代の英国スポーツカーの入門篇、同時に飽きることのないベイシック・スポーツカーとして、多くのことを学べる貴重な存在であった。1960年代はじめに誕生し、1980年までつくられつづけたのだが、後半はスポーツカーにとって不幸な時代、はたまた英国自動車メーカーの混乱などに巻き込まれ、チェンジするたびに好まぬ方向にいく、などと嘆く声が訊かれたものだ。  具体的にいうと、エンジンは合理化や排出ガス規制などに対応して、トライアンフ・スピットファイア用の1.5Lが流用されたり、車体も安全基準を満たすために視覚的に重たい樹脂製のバンパーを強制されたりした。  ここで敢えて最終期に近いMG1500を採り上げるのも、いまにしてみればこの時期のMGミジェット1500でさえ、充分にスポーツカー・テイストを味合わせてくれる、そんな気がするからだ。確かに、メッキのアイアン・バンパーを備えMGらしいグリルを備えた姿の方が軽快。エンジンも、ひとつ前の1.3L時代の快活な反応から較べるといささか鈍重。小排気量で快活なエンジンで小気味よく走る、といったMGミジェット本来のフィーリングはいささか失われている。  でも、トップを降ろしてオープンで走り出せば、いささかの懐かしさをともなったスポーツカー本来の味覚が甦ってくる。入門篇にして永遠の存在。現代のロードスターなどが指針にするような存在なのであった。

ヒイキのイケン:

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