43)マツダR360クーペ

Mazda

マツダ

思い返してみれば、マツダは独自の規範で時代に名を残す意欲的なモデルをいくつも残してきた。いうまでもなくその筆頭は、マツダ・コスモ・スポーツにはじまるロータリイ・エンジンを搭載した一連のスポーツ・モデルだ。ファミリア・ロータタリー・クーペ、RX-3サバンナ、RX-7、RX-8とつづく系譜は、わが国の自動車史においても独自のポジションを保っている。このなかにも、前輪駆動のRX-87ルーチェ・ロータリー・クーペなどという隠れた意欲作も含まれる。
 そんなマツダだが、昨今はまったくちがう顔を見せている。マツダ・デミオのヒットはご同慶だし、基本に忠実なスポーツカー、ユーノス/マツダ・ロードスターの存在も忘れられない。
■マツダR360クーペ/Mazda R360 coupe
*MAZDA CLASSIC*

 マツダ、当時の東洋工業が送り出した初めての乗用車。ミニマム・サイズの軽自動車ではあったけれど、そこに盛り込まれたメカニズム、スタイリングはちょっと捨て置けない逸品であった。すでに三輪トラックをはじめ自動車メーカーとして着実な歩みをみせていたマツダだけに、乗用車進出に対しても並々ならぬ意欲を注ぎ込んだ、そんな印象だった。
 ホイールベース1760mm、全長3m足らず、エンジン排気量は356cc。現代の「軽」よりふた回りはコンパクトなマツダR360クーペだが、グラス・エリアの大きなスタイリングは、当時の小型車のなかにあってひときわ垢抜けていた。多分型代をはじめ生産コストは掛かっているだろうに、と想像させる。リアに搭載されるエンジンにしてもそうだ。ライヴァルたちがコスト的に優位な2ストロークばかりだったときに、4ストローク空冷90°V2気筒を採用した。それもアルミ合金やマグネシウム合金まで多用して軽量化するなど、贅沢な素材を使う。ほかにもドライ・サンプ、吸入ガス予熱など、小さなボディに似合わず、いかにも技術志向のブランドを印象づけたのであった。トルク・コンヴァーターを用いたA/Tの採用も「軽」で初のものだった。
 まだイノウエが小学生の頃、わが家の初の乗用車がマツダR36クーペであった。2+2とは名ばかり、硬い荷台のようなリアに押し込まれて、いろいろなところに連れ出された。トーション・ラバーによる四輪独立懸架は、結構ソフトでユラユラと走っていたのを憶えている。
(2015-01-14追加)

ヒイキのイケン:

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