68)マセラティ・ボーラ

Maserati

マセラティ

2014年で「100周年」を祝ったマセラティは、ひと口でいえばイタリアの名門ブランドというに尽きる。なんども経営危機に陥り、シトロエン、デ・トマソ、フィアットなどの傘の下に入りつつも、創始者、マセラティ三兄弟の結付きを表す、ネプチューン神の持つ三叉のモリ「トライデント」エンブレムは、古今のマセラティ車のフロントに輝きつづけている。
 基本的には上級のスポーツカー、サルーン・ブランドだが、歴史的にはレースでの栄光、ときに個性的なスーパーカーなど、マセラティにはつねに羨望のまなざしが向けられていた。1980年代の四角く巨大なマセラティ・クアトロポルテⅢを走らせ、あまりの迫力に感動しつつ、メルセデスではなくてマセラティを選ぶ社長さんに親しみを憶えたりしたものだ。その後も、ガンディーニ・デザインのクアトロポルテ(Ⅳ)では九州まで快適至極のロング・トゥアーをしたり、はたまたマセラティ3200GTでイタリアを走ったり、いつの間にかマセラティにはずいぶんお近づきになっている。
 近年は独自の個性と存在感で生産台数を増しているマセラティ。高性能高級サルーン/GTのイタリア代表として、しばらく君臨しつづけるにちがいない。
■ マセラティ・ボーラ/Maserati Bora
*MASERATI CLASSIC*

 「実用的スーパーカー」などと呼びたくなる、マセラティ・ボーラ。ジウジアーロ・デザインの個性的なスタイリング、ミド・マウントされるのはマセラティの十八番ともいうべきV8気筒DOHC4.7Lエンジン、しっかりとつくり込まれたインテリアなど、ともすれば非現実的なのがスーパーカーといわんばかりのライヴァルたちのなかにあって、マセラティ・ボーラはよくバランスがとれて、本当に実用にできた。  そう、違和感といえば、当時シトロエン傘下だったことから採用された、独特のフィーリングのブレーキにこそちょっとした慣れが必要だったが、いきなりステアリングを明け渡されても、まったく気負うことなく走り出せる。そして結構な距離走ってもスーパーカー独特の不当な疲労感が溜らない。マセラティ・ボーラは長きに渡って所有しても困ることのない数少ないスーパーカーのひとつ、と実感したのだった。断っておくが、だからといってスーパーカーの名に外れるものではない。マセラティ伝統のV8ユニットは、ちょっとでも右足に力を込めれば、強烈な加速感とともに途方もない速度域にまで運んでくれる。そのときに体感される迫力は、間違いなくスーパーカー・カテゴリイ。

ヒイキのイケン:

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