108)ロータス・エランS1

Lotus

ロータス

コーリン・チャプマンという人物は、佳き時代のクルマ立志伝中の人物。学生時代、ガール・フレンドの父上のガレージを借りてはじめたクルマづくりからスタートし、ロータス社を興し、いくつものエポックメイキングなモデルを送り出し、F1コンストラクターにまで登り詰める。まさしく、クルマ好きの描く夢をいくつも実現してみせた。
 そうした背景もあってか、クルマ好きはロータス車をこよなく愛好し、少なからぬ尊敬を抱いてしまう。初期の意欲作、ロータス(オリジナル)エリートにはじまり、エラン、ヨーロッパといった傑作を残し、エスプリでスーパーカー世界にまで躍り出る。チャプマンの急逝を以ってひとつの時代は終わり、世情の変化もあってしばらく不遇の時代を過ごすことになるが、ロータス・エリーゼでふたたびクルマ好きのアイドルの座を得て、今日に至っているのはご存知の通り。スーパー・セヴンというロータス由来の永遠の1台も含め、その存在は大きい。
■ ロータス・エランS1/Lotus Elan S1
*LOTUS CLASSIC*

 現代でもスポーツカー・ブランドとして人気の高いロータス。いまなお高い注目を集めているロータスの「古典」というべきが、タイプ26、ロータス・エランのシリーズ1ことS1である。単純に性能だけで較べたらのちのたとえばエラン・スプリントなどの方が、エンジン・パワーをはじめとして進化している。だがしかし、趣味という価値観でみると、そのモデルのオリジンには企画者の思いがよりダイレクトに詰まっていて、興味深かったりするのだ。
 さて、エランS1は浮いたり沈んだりを繰り返していたロータス社が、二度目の浮上を目してつくり出した渾身の作。つまり、ロータス・セヴンで成功しロータス社を立ち上げるも、当時の新素材FRPを使ったエリートの生産性の悪さで倒産の危機にまで瀕していた1960年代はじめ、ふたたびのヒット作となったのがエランだった。

 ところで、エランをして英国スポーツカーの典型、代表のようにいわれたりするが、それは少しちがう。ロータスはことさら個性的であるコトを重んじる傾向にあり、むしろ英国スポーツカーの異端といってもいいほどだ。先のFRPモノコックの経験から、エランには鋼板を組んだバックボーン・フレームがつくられた。それは独創的な形で、前方にエンジンを抱え込み、後方はデフを吊り、四隅にサスペンションを受ける。それにFRP製のボディを被せるわけで、ストレスのほとんどシャシーが受けることからボディの自由度は大きい。初期のS1はオープン・ボディで、サイド・ウィンドウはサッシレスの釣り合い式。助手席側のグローヴボックスが独立していることや小さな2対のテールランプ、キャップ付のホイールなどが特徴。
 フォード116E型をDOHCにチューンニングしたエンジンは、この軽量ボディにとっては圧倒的で、「ライトウェイト・スポーツカー」のお手本のような走りを提供してくれる。それに、オリジンであるというプライドを携えて、エランS1は濃密な趣味生活のアイテムになるのだ。

One thought on “108)ロータス・エランS1

ヒイキのイケン:

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

一覧へ戻る