71)アルファ・ロメオ ジゥリエッタSZ

Alfa-romeo

アルファ・ロメオ

イタリア車が面白い、そのきっかけはアルファ・ロメオだったろうか。1960年代までのクルマ趣味において、アルファ・ロメオはイタリアンの主流であった。五感にダイレクトなスタイリング、サウンド、走り振りなど、誰が見ても格好よかったし馴染めた。周囲にアルフィスタが多く居たこともあって、身近かではあったが所有するまでにはいたらなかった。
 それにしても、アルファ・ロメオは多彩だ。クーペ・ボディは時代時代でどれもがスタイリッシュだったし、それにスペシャル・ボディというべきカロッツェリアメイドの「スペチアーレ」モデルが加わる。スパイダーも同様。持てることならミニカーのごとくに時代ごとにそろえたくなる。それだけでなく「ベルリーナ」、サルーン・ボディがこれまたなかなかの個性派揃い。
 ジゥリア・スプリントをはじめとして、いまでも街ですれ違うと「いいなあ」と思わせるアルファ・ロメオは少なくないし、アルファ156をはじめとする一連のモダンカーもひと味ちがうクルマ生活を与えてくれる。
■ アルファ・ロメオ ジゥリエッタSZ/Alfa-Romeo Giulietta SZ
*ALFA-ROMEO CLASSIC*
 数あるアルファ・ロメオのモデルのなかで、やはり一目置かされてしまうのはジウリエッタSZであろうか。アルファ・ロメオは1950年代中盤に送り出したジウリエッタ・シリーズの成功で生きを吹き返した。それまでは大型の高級車を手づくりしていたのだが、小型の量産モデルに切り替えないことには商業的に立ちいかなくなっていたのだ。一か八かではないだろうが、その思い切った転換が功を奏し、ジウリエッタ・シリーズは大ヒットとともにいろいろな魅力的ヴァリエイションを増やしていった。  スタイリッシュなクーペのジウリエッタ・スプリントにはじまり、可憐なスパイダー、4ドアのベルリーナ、さらには高性能GTたるスプリント・スペチアーレを加えていく。そして、このジウリエッタSZである。キャラクターからいうと、軽量レーシング・スポーツというポジション。そのために、チューニングしたエンジン、シャシーに、カロッツェリア・ザガートがアルミ軽量ボディをしつらえた。なにが魅力的といって、まだ空力がそんなに解析できていない時代、角を落として風に逆らわないようまあるいボディが形づくられたのだ。  レストレイションなのだろうか、まっさらのボディをつくっているザガートの傍系カロッツェリアを訪ねた。アルミ・パネルを形づくる熟練のクラフトマン。その手法にも感動したのだった。  翻って、ジウリエッタSZほど走らせていいバランスなクルマもめずらしい。排気量たかだか1.3Lなのに、こんなにしゅんしゅん走れていいのだろうか。そんな感じで箱根を飛ばした。ボディが軽いことはいいことなんだなあ。頂上のパーキングに停めて、いままでの走りの快感を思い出しながら、しばしそのスタイリングに見とれたのだった。SZのような愛すべき形は感じられなかった。  その翌年だったか、イタリアでアルファSZの試乗の機会を得た。スタイリングのことが引っかかっていて、さほどの期待を抱くことなく走り出したのだが、いや、走ってみるとそのポテンシャルの高さに目を瞠った。特別傑出したところがない代わりに、高い次元でそつなくいい走りを示すといった風。半日を痛快に走っているうちに、すっかりアルファSZがお気に入りになっていた。そうして見るうちにスタイリングも個性的で悪くない、と思えてくるから不思議だ。もちろんクラシックなジウリエッタSZと直接較べるものではないけれど、いや、アルファSZもいいなあ。

ヒイキのイケン:

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